2009年10月03日

スポンサーのロゴと映画の関係、というか、因縁

感想をアップしようと思ってそのままになっている、オルミ監督の「ポー川のひかり」について、そのうち何か書きたいと思っているうちに、ずいぶん時間が経ってしまった。

かなり期待をした。ここにその気持ちを書いた。でも、何となく、あまり期待しないほうがいいという気もしていた。そして実際に観ると…正直言って、何ともすっきりしない気分になった。
図書館の床が釘付けされた本で埋め尽くされるシーンを予告で観て、おそらくこれがこの映画の中で一番衝撃的なシーンなんだろうという予測はついたし、川のある風景や村人たちの生活をあるがままにゆっくりと描くだろうと思っていた。その予想は外れていなかった。自然光を大切にした撮影も悪くはない。
しかし、何か決定的なものが欠けているように思う。この映画を撮り始めたときには、監督やスタッフたちには、どうしてもたどり着きたいと思う場所があったのではないだろうか。彼らが一番見せたかったものを、ついに見ることができなかったような気がしてならない。
自分のように、「木靴の樹」を観てこの監督の名前をしっかりと記憶に留めた者であれ、初めて彼の映画を観た者であれ、この映画は詰めが甘いと思ったのではないかと思う。日本人との宗教観の違いがどうこう、という問題ではない。いろんな点で中途半端なのだ。

こう書きながらも、自分はオルミ監督のファンだから、できれば誉め言葉でしめくくりたいし、この映画を多くの人に観てもらいたいという気持ちも変わらない。自分の意見など忘れて、ポー川のほとりで暮らす人々の生活を見てほしいと思う。実直な人々の姿を、彼らの目線から描く姿勢は、昔と全く変わっていない。テンポのゆっくりした、地味な映画だが、登場人物の表情は魅力にあふれている。

自分の個人的な文句に過ぎないと思うが、この映画で一番納得できなかったのがデルのノート・パソコンの使われ方だった。最後のクレジットに協賛会社として名前が載っていたから、どうしても登場させる必要があったのだろうと思う。最初のほうの、大学の講義でこれを見て講義をする教授のシーンでこれが登場するのはいいのだけど、村人たちとの会議の席で、教授の前に鎮座するノート・パソコンには「どこで充電したの?」とツッコミを入れたくなった。
そんなこと、全くどうでもいいことかも知れないが、リアリズムの追求がこの監督のウリであり、自分もそこにほれ込んでいた以上、自分にはどうしても納得できなかった。ただし、デルの出資がなかったら、最初のシーンの撮影はできなかったのかもしれない。この映画の製作はできなかったのかもしれない。

映画を見ていて、ある会社のロゴが不自然にアップになるとき、どうにかならないかと思うことがある。一番嫌だと思ったのは、スピルバーグの「マイノリティー・レポート」で、ブルガリとGAPの宣伝の入れ方が最悪だったこと。この手のタイアップは本当にうっとうしい。

だが、「ダージリン急行」を観たときは、マーク・ジェイコブスがデザインした特注のスーツケースが、主人公である3兄弟の次の登場人物のように映画に溶け込んでいる気がした。あのでかいスーツケースが、最後にはインドに置いて行かれてしまう。こういうことは、よほどの太っ腹の金持ちにしかできないだろうけど、ここに登場するカバンはそういう金持ちが旅行で雑に扱っても壊れないように頑丈に作られたそうだから、荒っぽい扱いを受けてもいいのだろう。
(ところでこの映画のメーキングを見たとき、登場する俳優さんの誰よりも、ウェス・アンダーソン監督がカッコいいと思った。)

基本的には、スポンサーは金やモノは出してもロゴは出さないようにしてくれれば有難いと思う…などと言ったら、どこの会社も金なんか出してくれないのかもしれない。あまり細かい文句ばかり言わないほうがいいのだろうけど、映画のリアリティーぶち壊しになるのは、回避してもらいたいと思う。
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posted by ring-rie at 16:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんというか…エレガントでない、ですよねえ。
些少なことかもしれないけど、だからこそ、喉の奥に刺さった小骨みたいに気になる。心が萎える。わかります。
茶目っ気のある登場の仕方ならオケなんですけどね。
それにしてもダージリン急行、観たかった!ぜひ、スクリーンで見るべきでした…(予告編は観たのに。私ってバカバカバカ)
Posted by ショコポチ at 2009年10月05日 23:21
ショコポチさん、こんばんは。

>喉の奥に刺さった小骨みたいに
まさにその表現がぴったりです、今回の場合。
これがオルミ監督の最後の長編作になるだろうって言われているので、なんだか、このすっきりしない気分が余計に晴れません。それは、スポンサーのロゴの問題だけでないとは思うのですけどね。
解釈の問題かもしれませんが、そこで妥協するかなあ…と自分は思いました。「萎える」って言葉もぴったりですね。

>茶目っ気のある登場の仕方なら
そうなんです。「ダージリン急行」の場合は、シーンによってはまるでCMみたいにカバンが目立っていて、ここまでやれば逆に立派だと思いました。

>スクリーンで見るべきでした…(予告編は観たのに。
あ、実は自分も、映画館は予告だけ。上映中に観にいけず、DVDです。なので、本編以外のオマケも観ましたよ。オマケもお薦めです。

だらっと観てしまいました。3兄弟の珍道中を楽しみつつ、自分もインド観光しておりましたが、すごく記憶に残るものがあるかと訊かれたら、あまり残っていないのです。誉め言葉にはなっていませんが、自分の場合、あの映画は夢のように終わってしまいました。シーンの断片だけが頭に残っています。でも、観ているときは、面白くて心地よかったです。
しかし、やっぱり映画館で観て、インド観光を堪能したかった気がします。DVDよりもっと映画に入り込めたかもしれません。ロードムービーだから余計にリラックスして観てしまいました。勿体ないことしたのかも〜
Posted by ring-rie at 2009年10月06日 22:09
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