2009年05月13日

Stanley Clarke/JOURNEY TO LOVE

先日中古で見つけた、スタンリー・クラークの「Journey To Love」は、950円だった。安い、と思ったが、輸入盤なのでそんなものかもしれない。
LPを持っていたのだが、うっかりタクシーの中に忘れて、そのままになってしまった。その後数年ぐらいはあまり思い出さなかったのだが、最近彼の新譜を買って、またこのアルバムを聴きたくなった。

stanleyclarke-j-t-love.jpgまだフュージョンという言葉が定着しない頃、このアルバムを聴いて、ベースってこんなふうに弾けるものなの? というのが、初めて聴いたときの感想。今でこそこうしたスタイルは珍しくなくなったが、当時はまだまだベーシストは地味な存在だったと思う。しかしそんな常識は、彼のど派手な演奏スタイルで登場できれいに消えた。彼だけでなく、当時続々と登場した超絶テクニックのベーシストたちは、演奏を地味に支えるというより、目立つ演奏で聴衆の注目を集める存在になったと思う。

しかし、アルフォンソ・ジョンソンと彼のベースに驚嘆してから間もなく、ジャコ・パストリアスが登場し、そのうちマーカス・ミラーが出てきて、ベースの神様だらけとなり、その活動を追いきれなくなると、自分はだんだん熱が冷めていった。テクニックの凄さに驚かなくなった。所詮自分はただのリスナーだから、楽器を弾いていた人たちほど、彼らに夢中になれなくなっていった。

しかし、それは後で思ったことで、とりあえずこのアルバムが出た頃は、一番新鮮な音楽を手にしているような気がした。トータル・アルバムとしての体裁は、ジャズのアルバムというより、プログレを思い出した。当時スタンが在籍していたチック・コリアのバンド、Return To Foreverに近い雰囲気はあるが、あくまでも中心にあるのはスタンの個人的趣味だ。そう断言するのは、最近になって出た「Toy Of Men」とこの70年代の作品が一直線でつながっていると思うから。スタンの外見はずいぶん変わってしまったけれど、根底にある彼の嗜好はあまり変わらっていなかった。

自分は大好きだが、彼のソロでのエレキベースのスタイルが好みでないという人の気持ちも分かる気がする。これでもかとばかりに個人芸の決め技を盛り込む、ど派手キンキラキンのフュージョン。しつこいまでの歯切れのよさ、際限なく分割される音をコントロールする強靭なリズム感。多くのリスナーとミュージシャンが絶賛したが、若干ヘビメタ的な盛り上げ方とやり過ぎ感に、正統派ジャズファンはうんざりし、昔ながらのロックファンの一部は何やら違和感を覚えたと思う。たぶん自分の中にも、絶賛と違和感が入り混じっていたから、彼のフュージョン系の作品をほとんど聴かない時期があったのだろう。そんな時期を経て、聴きたくなったのは、クラーク・デューク・プロジェクトあたりよりも、このソロアルバムだった。

「Journey To Love」には上記のようなど派手な作品もあれば、アコースティック楽器のみのトリオ作品もある。ジョン・マクラグリンのギターとチック・コリアのピアノ、スタンの息の合った演奏は、限りなく美しい。そんな一面もあれば、何となくフィフス・ディメンションを思い出すような歌も入り、ジェフ・ベックがギターソロに1曲参加し、上で書いたようなバカテク大会的な盛り上げもある。この雑多さが彼の個性なのだと思う。

音はそれほどよくないが、彼が演奏にのめりこんでいくときの迫力がよく伝わってくる↓



天才と呼ばれるミュージシャンは山ほどいる。その一部は数十年演奏を続け、あまり注目されない時期を経て、再評価の日を迎えるのだろう。再度、彼の人気が日本で出てほしいと願っている。
誰かにベースの神様という肩書きをつけるのは、いくらなんでも、もう流行らない。自分はただ彼の世界に触れたいと思う。
posted by ring-rie at 10:30| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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