「借りた本を返さないヤツは許せん!」と思っている人、大事な本を人に貸したらそのまま帰ってこなかった人…はたくさんいると思います。
自分は20代ぐらいまでは特に、極めていい加減な人間だったで、借りっぱなしの本をそのまま何年も返さないということが多々ありました。
しかしついそのツケが回ってくる日が来て、職場の年下の同僚に貸したマンガの単行本を返してもらわないうちにその職場を辞め、その後引越して彼女と音信不通になりました。そのときは、読み終わったマンガだからべつにいいかと思っていたのですが、最近ふとまた読みたくなり、古本で買おうと思ったら、法外な価格がついているではありませんか!!
その単行本とは、近藤ようこの短編マンガ集「仮想恋愛」です。出版社は確か青林堂で、今後も再発売の予定はないようです。(関係ありませんが、マンガを貸した元同僚の旧姓も近藤です)
自分は過去に自分がよそ様に対してどんな迷惑をかけていたか思い知ったわけですが、そんなことは棚に上げて、「こら近藤、マンガ返せ」と叫びたくなりました。近藤(あえて呼び捨てにしよう)は私からこのようなマンガを借りるだけのことはあって、相当マニアックなマンガの好きな人物でした。彼女から借りたマンガ単行本の中にはスプラッター系少女マンガだの、かなり過激なものがありましたが、私はそれほどコアなマンガ読者ではなかったので、何を借りたか記憶はありません。あるとき近藤に、「近藤ようこのマンガ、そろそろ返して」と言ったら、近藤は「へへへ」と笑ってごまかしました。絶対読み終わっていたはずなのに! しかし自分にはそれほどマンガの単行本に執着はなかったので、しつこく「返せ」と迫ることはありませんでした。
この単行本の中で読みたかったのは、「天王寺、参る」という短編です。他にもいい作品はありましたが、それほど印象に残らないものもあったと記憶しています。しかし、「天王寺、参る」は傑出していました。演劇でも取り上げられる身毒丸とその継母が登場する話です。絵はシンプルで上手いとは言いがたいのですが、現代から中世日本にタイムスリップするような展開に不自然さがなく、構成が抜群だと思います。
そこで、このマンガが掲載された雑誌の「マンガ奇想天外」を探すことにしました。この雑誌は基本的にSFマンガ専門だったようですが、あまりSFと関係ないマンガもいろいろあります。大友克洋はSFものを書いていましたが、彼の作品としてはそれほど面白いと思いません。
さらに他のマンガ家の名前を見れば、
この雑誌の充実振りが分かると思います。
このマンガ奇想天外をネット・オークションで3冊(5,6,7号)まとめて落札しました。こうして「天王寺、参る」を読み返すことができました。その作品の前に、若かりし頃の高橋留美子と近藤ようこの対談が載っていました。ご存知の人もいるでしょうが、この二人はクラスメートで親友だそうです。
雑誌を読んで、「あれ?」と思いました。その対談を読んだ記憶があるのです。
そして実家にこの雑誌があるかどうか探したら、ありました…
アホですね、自分が大昔買ったことを忘れていました。その雑誌で読んで気に入ったから、近藤ようこの単行本を買うことにしたわけです。完全に記憶から消えていました。
というわけで、すっかり変色した同じ雑誌が2冊、現在自分の手元にあります。どなたか読みませんかね??
自分はその後近藤ようこの作品を全く読んでいません。興味がなかったわけではありません。あるとき、自分が本屋に行ってマンガを立ち読みしようとしたら、ほぼ全てのマンガがビニールで密封され、読めなくなっていました。その頃からマンガから遠ざかってしまいました。
最近になって彼女の「水鏡綺譚」を買いました。絵はうまくなっていますが、動物はそれほどよく書けていると思いません。歴史ものを手がけるマンガ家で彼女より人気のある人はたくさんいるようです。
しかし彼女は、ヒューマニズムと残虐性の間を縫うような描写が非常に印象的なので、若干の凡作は混じっても読みがいのあるマンガ家です。ただし好みはかなり分かれるかもしれません。
彼女も素晴らしいマンガ家ですが、同様にすごい作品を書く作家がマンガ奇想天外に多数名を連ねています。80年代前半のマンガに70年代のアングラ的マンガの影響がかなり残っているのも興味深いので、こうした雑誌の拾い読みもなかなか楽しいです。
posted by ring-rie at 02:26|
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